ADSLとVDSLの混在

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ここでは、ADSLVDSLの混在に関する考証と検証を報告する。

これは2006年の記事です。

はじめに

動機

グローバルIPアドレス 自宅サーバを建てようかと思ったが、今使っているinternet接続は高速であるもののグローバルIPアドレスを持っていないため、できない。また、年に2回くらい、proxyサーバが落ちているらしく、internetへのアクセスができないことがある。

現状

2Fに入っているIT系企業の商品である「インターネットマンション」のテストケースのため、同マンションに入居している全入居者へinternet接続が無償提供されている。グローバルIPアドレスは付与されないものの、高速である。接続には構内電話線を利用したVDSLを使用している。

回線種別の選定

光ケーブルを引き込みたいが、外部からファイバーを引き込むためにはエアコン室外機用の穴を使わなければならず、部屋の配置に合わず引き回しが長くなり危険。そもそも大家から待ったがかかる可能性があるし、2Fの某社との義理も欠くことになるため使えない。コストの問題もあるし、リスクはあるが住居側工事が必要ないADSLを引き込むこととする。

必要なもの

ADSL接続契約
後述
努力と根性
そしてtry and error。

理論的考証

DSLという仕組み

そもそもADSL・VDSLとはなんなのか、ということであるが、厳密にはこれらは全てワイドバンド接続の方式の一つであるということだ。ADSLは「Asymmetric Digital Subscriber Line」の略で、非対称デジタル加入者線のことである。一方でVDSLは「Very high-bit-rate Digital Subscriber Line」の略で、超高速デジタル加入者線のこと。つまり、ADSLのAとVDSLのVではそもそも意味しているものが違うので名称で直接比較することはできない(だいいち、VDSLだって非対称だ)

ワイドバンド接続とは、通信する2点間に複数の周波数帯で接続を確立し、これらをまとめて1本の回線に見立てることで通信の高速化を実現している。単一の周波数では通信量に制限があるし、だいいちこの周波数には電気的に限界がある。

VDSLはADSLに対して使用する周波数帯を広げ、ADSLより高速に通信を行うことを実現する接続方法だが、VDSLはその使用する周波数帯の問題でノイズに弱く、基本的には短距離つまり構内で使用するものとされている。VDSLに関してはMansionBB.comが詳しい。

利用周波数帯重複の有無

以下に示すのは、各xDSLで使用されている通信周波数帯の一覧。

Band VDSL
バンドプランA
ADSL 1.5
G.992.2
ADSL 8M
G.992.1
ADSL 24M
Double
Spectrum
ADSL 408M
Quadrable
Spectrum
26kHz ~ 138kHz - 上り 上り 上り 上り
138kHz ~ 552kHz - 下り 下り 下り 下り
552kHz ~ 1.1MHz - - 下り 下り 下り
1.1MHz ~ 2.2MHz 下り - - 下り 下り
2.2MHz ~ 3.75MHz 下り - - - 下り
3.75MHz ~ 5.2MHz 上り - - - -
5.2MHz ~ 8.5MHz 下り - - - -
8.5MHz ~ 12.0MHz 上り - - - -

こうやって眺めてみると、ADSLとVDSLが重なっているのは、ADSLが周波数帯を広げたAnnexの場合のみであることがわかる。VDSLが使用する周波数帯を決めるときも、ADSLの基本規格であるG.992.xを回避したというわけで、当然の結果である。一方でVDSLより後発のADSL Annex(double/quad-spectrum)も、VDSLの上りの下限が3.75MHzであるから、本来数字上では4.4MHzまで伸ばしたいにもかかわらず3.75MHzまでしか使用していない。3.75MHz~4.4MHzを下りで使ってしまうと、VDSLの上りと反対方向で干渉するので・・・というのが建前だが、同一線上で自宅~局間を使うことなどできるわけがないので、やはり1.1MHz以上はVDSLのために空けておきたい。

ADSL 8M以下であれば、VDSLと使用する周波数帯が重複することもなさそうだ。

だいいち、8Mまでしか使えそうもないといっても、ADSL導入の目的は自宅サーバの構築であって、しかもそれがASCII中心になることが予想されるので、問題になるようなことはないと思う。なにせ、ADSL40Mにしたところで、部屋に来ているVDSLよりは遅い。

回線速度の決定

本来であれば新しい回線に全てを任せたいところではあるが、前述の通りVDSLに影響を与えるAnnexは使えないし、それ以下のスピードでは、今使っているVDSL以上の速度など出るわけがないので、共存させることにする。

となると、目的の自宅サーバ構築を念頭に置くと速度はわりとどうでもいい問題だ。既存のVDSL環境になるべく干渉しないことを考えて、ADSL 1.5M契約とする。

ADSL導入

事前調査

まずは中継局からの距離を確認しておく。住んでいるところは東京都大田区なので、まさか繋がらないということはないだろうが、やはり確認は大事だ。

結局、局から1km弱だった。ADSL開通もOKとのサインが出たので決行する。

申し込み

KDDIをプロバイダにしてPHSデータカードを使っているので、ADSLもKDDIで契約することにする。4月末のことだった。工事は2週間程度で完了するとのこと。

工事完了後の導通確認

まだかまだかと待っている間に、ADSLモデムとスプリッタが先に届いた。設定してあるのでこのまま使えという。今のうちに、ノートPCから直結してLAN設定だけ済ませておくことにする。

待ちに待った5月19日、ようやく工事完了の通知が来た。まずはこの時点でVDSL経由のinternet接続が生きていることを確認したうえで、VDSLモデムを取り外す。取り外し前に某所からHTTPダウンロードを行い、速度も確認しておいた。1533kbps。

そしてADSLモデムを繋ぎ(スプリッタは繋がず)ノートPCからinternet接続をしてみる。・・・・繋がった、成功だ。上りは480kbps、下りは752kbpsとモデムが表示している。

速度測定

そして当初予定していた通り、右の図のように接続しなおす。ただし、今のところまだHubには接続しない。こんなものに金を出すのもバカらしいとも思ったが、接続数が多くなるので100mmのRJ11ケーブル2本を買ってきて、RJ45ケーブルは全て自作、極限まで短く仕上げた(地震があったときは、あまりに接続が窮屈で、全員仲良く揺れていた)。

この状態でまずVDSLモデムの電源を入れ、PCからinternet接続ができるか確認する。ファイル転送では1510kbps、多少遅くなっているが誤差の範疇だ。次いでADSLモデムの電源を入れる。ついでに電話機の電源も入れる。数十秒後、ADSLモデムのネゴシエーションが無事終わったことを示すLED表示を頼りに、ノートPCからADSLモデム直結でinternet接続の確認をする。・・・・こちらも問題なしで、速度も上りは480kbps、下りは768kbpsとモデムが表示、VDSLの影響はないようだ。

直通確認

ASDLモデムの設定を一時変更(忘れずに閉じること)し、外部からの全接続をノートPCへ転送するように設定変更。モデムからグローバルIPアドレスを調べた上でノートPC上にてHTTPサーバを起動。VDSL接続PCからHTTPブラウザを起動し、HTMLが無事転送されていることを確認。直通確認とした。この状態でもVDSL側PCでのHTTPダウンロードも1523kbpsと、まったく問題なし。

考察

結論

結論として、ADSLとVDSLは共存できるということがここで実証された。ADSL側の速度が1.5Mというので、実際に接続する前から確信はあったが、やはり自分の目で確かめると安心する。おそらくADSL 8MBでも問題ないだろうとは思うが、Annexの場合はわからない。

追加の疑問1

そういえば確信していたと言いながら心配な点をひとつ、あとから気がついた。VDSLモデムはスプリッタを兼ねていて、入口がRJ11、出口がRJ45のLANとRJ11の電話線だが、このスプリッタが1.1MHzではなく20kHz辺りから分離するものだったらADSLは繋がらないのではないか? と。

もっとも、ADSL接続が確立できたことで上記の疑問は消し飛んだ。そもそもVDSLはバンドプランAで1.1MHz以上の周波数帯を使用するものだから、音声通話のためにフィルタリングすることなど必要ないといえば必要ない。接続がうまくいったので、ここは追求しないこととする。

追加の疑問2

サーバの運用として、外部へはHTTPのみ公開、内部にはFTP等様々なアクセスの公開を考えていたのだが、ADSLモデムの仮想DMZ機能を使用すると速度とレスポンスが遅すぎるという問題。HTTPに限らず、FTPでもECHOでもinternet経由の転送のほうが段違いに速い。レスポンスが悪いだけなら我慢できるが、単純なデータ転送でさえinternet経由のほうが早いというのは使いづらい。ADSLモデムの転送設定が悪いのか、ADSLモデムの性能が悪いのか、いまのところわからない。

関連項目

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